− SAMPLE VOICE −











−STORY−



京には、昔からの小さな夢があった。

『歌を歌う仕事がしたい―――』

それは子供の頃になら、誰もが描く空想だった。



しかし、大人へと近づくにつれ、

京は夢を現実とするべく歩き始める。



そのとき、夢は質量を持ち、

彼女の現実に影響を与え始める。



―――現実。

旅館を営む家。

その旅館を愛し、女将として忙しく切り盛りする母。

自分の夢を追いかけ、家を出た兄。

後を継ぐべき自分。



自分を取り巻く大切な人たちと、自分の夢。

そのふたつの間で、一人思い悩んでいた京。



そんな彼女の思いを真人が共有することになったのは、

ただの偶然ではない。



夏だけの異邦人である真人にしか、

京はその思いを打ち明けることができなかったのだ。



真人という拠り所を得た京は、夢を追い、やがて自分を大きく変化させていく。